
この記事の結論
- 福島県は、建設業法に基づく監督処分(指示・営業停止・許可取消)を県のホームページで公表しています(最新更新:2026年9月30日)。
- 掲載分を整理すると、処分の原因は「許可・業種の範囲を超えた請負」「技術者の配置」「役員の欠格要件」「労働災害」「経審を受けずに公共工事を受注」に集中しています。
- その多くは、変更届の期限管理、受注時の金額・業種チェック、役員の状況確認といった日常の管理で防げる性質のものです。
- 処分は会社名とともに公表され、国土交通省のネガティブ情報等検索サイトでも確認できるため、取引・入札・金融機関の評価にも影響し得ます。
福島県の建設産業室は、建設業法に基づいて県が行った監督処分の一覧を公表しています。2026年9月30日の更新では、民間工事に係る営業停止や、労働安全衛生法違反を理由とする指示処分などが新たに掲載されました。
本記事では、県の公表内容と「福島県の建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」(令和7年12月12日改正)をもとに、どのような理由で処分が行われているのか、そして自社が同じ状況に陥らないために何を確認すればよいのかを、建設業許可を専門とする行政書士の立場から解説します。
※本記事では個別の事業者名は掲載していません。処分内容の詳細は、記事末尾の出典(福島県ホームページ)をご確認ください。
1.建設業法の「監督処分」とは
監督処分とは、建設業者が建設業法やその他の法令に違反した場合に、許可行政庁(福島県知事許可の場合は福島県)が行う行政処分です。重さの順に次の3種類があります。
| 処分の種類 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 指示処分 | 建設業法第28条第1項 | 違反状態の是正や再発防止のための措置を命じるもの。従わない場合や、3年以内に類似の違反を繰り返した場合は営業停止の対象になります。 |
| 営業停止処分 | 建設業法第28条第3項 など | 一定期間、新たな請負契約の締結や入札・見積りなどができなくなります。公共工事・民間工事のどちらに係るものかで範囲が分けられます。 |
| 許可取消 | 建設業法第29条・第29条の2 | 建設業許可そのものが取り消されます。欠格要件に該当した場合、不正な手段で許可を受けた場合、営業所の所在が確認できない場合などが対象です。 |
福島県は、処分日から5年を経過しないものを公表するとしています。また、全国の処分歴は国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で誰でも検索できます。取引先や発注者、金融機関が確認できる情報であるという点を押さえておくことが大切です。
2.福島県の監督処分の掲載状況(2026年10月30日確認)
県のホームページに掲載されている処分を、弊所で種類別・理由別に整理しました(件数は掲載行を弊所で数えたもので、同一事業者が複数回掲載されている場合はそれぞれ1件として数えています)。
| 種類 | 掲載件数 | 主な理由(件数) |
|---|---|---|
| 許可取消 | 19件 | 営業所の所在が確認できない(9)/役員等が欠格要件に該当(8)/欠格要件を隠した不正な許可取得(2)/経営業務管理責任者・専任技術者の不在(1) ※1件は「欠格要件該当」と「不正取得」の両方で取消 |
| 営業停止 | 25件 | 許可がない・許可業種外で500万円以上の工事を請負(12)/入札妨害・贈賄・談合(8)/無許可業者等との下請契約(2)/技術者・施工体制台帳の違反(1)/死亡事故を伴う労働安全衛生法違反(1)/住宅瑕疵担保に関する指示に従わなかった(1) |
| 指示処分 | 37件 | 労働安全衛生法違反による罰金刑(15)/技術者の配置・専任違反(12)/経営事項審査を受けずに公共工事を受注(5)/施工体制台帳・契約書面・再下請通知の不備(3)/営業所の届出漏れ(1)/許可業種外の公共工事を請負(1) |
2026年(令和8年)に入ってからの処分は、許可取消2件、営業停止3件、指示処分7件です。指示処分7件のうち6件が労働安全衛生法違反(会社と役員・職長等の罰金刑)を理由とするもので、現場の安全管理が建設業許可の行政処分に直結していることがわかります。
3.処分の理由別に見る「つまずきやすいポイント」
(1)許可・業種の範囲を超えた請負(営業停止で最多)
営業停止25件のうち12件が、許可を受けていない、または許可業種以外の工事で、500万円(税込)以上の請負契約を結んだケースです。このうち複数件は「許可を受ける前」の契約が問題とされています。また、許可業種を持っていても、営業所技術者が不在で要件を欠いた状態のまま請け負ったケースもありました。
- 500万円は消費税込みで判断し、注文者が提供する材料費も含めて考えます(建築一式工事は1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事)。
- 工事を分割しても、正当な理由がなければ合計額で判断されます。
- 元請として、無許可業者と500万円以上の下請契約を結ぶことも営業停止の対象です(基準では7日以上)。
(2)技術者の配置・専任(指示処分で2番目に多い)
指示処分のうち12件が技術者に関するものです。特に多いのが、営業所の専任技術者(現在の名称は「営業所技術者」)を、専任が必要な工事の主任技術者として現場に配置していたというケースです。
- 主任技術者・監理技術者の専任が必要になるのは、請負代金4,500万円以上(建築一式9,000万円以上)の工事です(令和7年2月1日施行)。
- 令和6年12月13日施行の改正で、請負代金1億円未満(建築一式2億円未満)、営業所との移動時間がおおむね2時間以内、連絡員の配置や情報通信機器の設置など一定の要件をすべて満たす場合に限り、営業所技術者が専任現場を兼務できる特例が設けられました。要件を満たさないまま兼務すると違反になります。
- 資格要件を満たさない者を主任技術者に置くことは、基準上15日以上の営業停止の対象です。
(3)役員の欠格要件(許可取消の主な理由)
許可取消のうち8件は、役員等が刑に処せられ、建設業法の欠格要件に該当したことが理由です。罪の内容は、傷害・暴行、窃盗、道路交通法違反、税法違反、廃棄物処理法違反などさまざまで、建設業の業務と直接関係がない事件も含まれます。暴力団排除の照会結果による取消もありました。
- 拘禁刑(令和7年6月1日から懲役・禁錮は拘禁刑に一本化)以上の刑のほか、傷害・暴行などの一部の罪や建設業法違反等は罰金刑でも欠格要件になります。
- 新たに就任した取締役が欠格要件に該当していたため取り消されたケースもあり、役員を迎える際の確認が重要です。
- 欠格要件に該当する事実を隠して誓約書等を提出し、許可を受けた・更新したケースは「不正な手段による許可取得」として取り消されています。
(4)変更届・営業所の管理
許可取消のうち9件は、営業所の所在地が確認できず、県の公告から30日を経過しても申出がなかったことによるものです。また、経営業務管理責任者と専任技術者が退職したにもかかわらず、変更手続をしないまま営業を続けていたことで取り消された例や、届け出ていない営業所で請負契約を結んでいたことによる指示処分もあります。
移転・役員交代・技術者の退職といった変化は、決められた期限内に変更届を出すこと、そして要件を満たす後任をすぐに確保できない場合は早めに専門家へ相談することが、許可を守るうえでの基本になります。
(5)経営事項審査を受けずに公共工事を受注
指示処分のうち5件は、経営事項審査(経審)を受けずに、市町村や土地改良区が発注する公共工事を受注したケースです。公共工事を元請として直接請け負う場合、原則として発注者と契約を結ぶ日の1年7か月前の日の直後の事業年度終了日以降の決算に基づく経審を受けている必要があります。「規模の小さい発注者だから大丈夫」と考えず、契約前に有効な経審結果があるかを確認しましょう。
(6)労働災害・労働安全衛生法違反
指示処分のうち15件が、労働安全衛生法違反で会社や役員・職長等が罰金刑を受けたことによるものです。さらに、足場の墜落防止設備を設けなかったことによる死亡事故で、建設業の営業の全部について営業停止となった例もあります。基準では、労働安全衛生法違反で刑に処せられた場合は原則として指示処分、特に重大な事故の場合は3日以上の営業停止とされています。
(7)入札妨害・贈賄・談合(処分期間が最も長い)
公共工事に関する入札妨害・贈賄・談合で役員等や従業員が刑に処せられたケースでは、公共工事に係る営業について120日〜1年の営業停止となっています。基準上、代表権のある役員等が刑に処せられた場合は1年間、代表権のない役員等の場合は120日以上とされています。公共工事を主力とする会社にとっては、経営に大きな影響を及ぼす処分です。
4.福島県の監督処分基準(令和7年12月12日改正)のポイント
福島県は「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」を定め、処分の重さの目安を示しています。主なものは次のとおりです(情状により加重・減軽があります)。
| 違反の内容 | 処分の目安 |
|---|---|
| 主任技術者・監理技術者を置かない(資格要件を満たさない者を置いた場合を含む) | 15日以上の営業停止 |
| 技術者の専任義務違反 | 指示処分(従わない場合は7日以上の営業停止) |
| 施工体制台帳・施工体系図の不作成・虚偽作成 | 7日以上の営業停止 |
| 一括下請負(丸投げ) | 15日以上の営業停止 |
| 無許可業者との下請契約 | 7日以上の営業停止 |
| 虚偽の経審結果を公共発注者に提出(完成工事高の水増し等) | 30日以上の営業停止 |
| 談合・贈賄等(代表権のある役員等が刑に処せられた場合) | 1年間の営業停止 |
| 労働安全衛生法違反で役職員が刑に処せられた | 指示処分(特に重大な事故は3日以上の営業停止) |
| 廃棄物処理法・盛土規制法違反(役員等が拘禁刑) | 15日以上の営業停止 |
| 契約書面の不交付、営業所の届出漏れなど | 指示処分 |
営業停止期間中は、新たな請負契約の締結や、それに関連する入札・見積り・交渉ができません。一方で、建設業許可・経営事項審査・入札参加資格審査の申請や、処分前に結んだ契約に基づく工事の施工、災害時の緊急工事などは行えるとされています。
5.自社でできる予防チェックリスト
掲載されている処分事例から、日常的に確認しておきたい項目をまとめました。
- ☐ 受注前に、工事の業種と請負金額(税込・支給材込み)が自社の許可の範囲内か確認している
- ☐ 下請に出す際、相手の許可の有無・業種・有効期限を確認している
- ☐ 営業所技術者を現場に出す場合、兼務特例の要件をすべて満たしているか確認している
- ☐ 主任技術者の資格・実務経験が配置する工事の業種に対応している
- ☐ 役員・技術者・営業所の変更があったとき、期限内に変更届を出している
- ☐ 新しく役員を迎える際、欠格要件に該当しないか確認している
- ☐ 公共工事を元請で受注する前に、有効な経審結果があるか確認している
- ☐ 施工体制台帳・施工体系図、契約書(変更契約を含む)を書面で整えて保存している
- ☐ 足場・高所作業など、墜落・転落防止の安全対策を現場任せにしていない
ひとつでも不安な項目があれば、早めに確認することをおすすめします。違反の多くは、悪意によるものというより、「制度の変更を知らなかった」「手続を後回しにしていた」ことがきっかけで起こり得るものです。
なお、契約書・見積書・施工体制台帳などの書面は、建設業法第31条に基づく立入検査(いわゆる建設Gメンの調査)でも確認の対象になります。書類の備え方は「建設Gメンの立入検査はどこを見る?建設業法31条の対象・罰則・事前対策を解説」で詳しくご紹介しています。
6.よくあるご質問
Q.営業停止処分を受けている間、工事はすべて止めなければなりませんか?
A.福島県の基準では、処分前に締結した請負契約に基づく工事の施工や、瑕疵に基づく修繕、災害時の緊急工事、請負代金の請求・受領などは行えるとされています。停止されるのは、新たな請負契約の締結や入札・見積りなどです。具体的な範囲は処分の内容(公共工事に係るもの・民間工事に係るもの等)によって異なります。
Q.役員が仕事と関係のない事件で罰金刑を受けました。許可に影響しますか?
A.罪の種類によっては影響します。拘禁刑以上の刑のほか、傷害・暴行などの一部の罪は罰金刑でも欠格要件に該当し、許可取消の対象になり得ます。該当するかどうかは事案ごとの確認が必要ですので、お早めにご相談ください。
Q.自社の処分歴や取引先の処分歴は調べられますか?
A.国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で、全国の建設業者等の過去の行政処分歴を検索できます。福島県知事による処分は、県のホームページでも公表されています。
7.弊所がお手伝いできること
行政書士法人近藤事務所は、建設業許可・経営事項審査・入札参加資格審査を専門とする行政書士法人です。手続の代理にとどまらず、監督処分につながりやすい「管理の抜け」を事前に防ぐお手伝いをしています。
- 許可・変更届・決算変更届の期限管理:役員交代や技術者の退職、営業所の移転があったときに、期限前に手続を進めます。
- 業種追加・技術者要件の確認:受注予定の工事が許可の範囲内か、配置予定の技術者が要件を満たすかを一緒に確認します。
- 経営事項審査・入札参加資格審査:公共工事の受注計画に合わせて、経審の受審時期や評点の見通しをご提案します。
- 行政調査への備え(会社の防衛コンサルティング):建設業法第31条に基づく立入検査などを想定し、帳簿・契約書・施工体制台帳などの保管ルールづくりや、模擬的な書類チェックを支援します。(立入検査で見られるポイントはこちらの記事で解説しています)
関連記事
建設Gメンの立入検査はどこを見る?建設業法31条の対象・罰則・事前対策を解説
監督処分のきっかけは、許可行政庁による報告徴収や立入検査で見つかることもあります。重点的に確認される項目やチェックされる書類、日頃からできる備えを解説しています。
「うちは大丈夫だろうか」という段階でのご相談も歓迎しています。問題がある場合は率直にお伝えし、どう改善すればよいかを具体的にご提案します。県外のお客様も、WEB面談と電子申請(JCIP)により来社不要で対応しています。
建設業許可・経審のご相談は初回無料です
許可の範囲・技術者の配置・変更届の状況など、気になる点をお気軽にお聞かせください。
お電話:024-529-7571(平日9:00〜17:00)
メールでのご相談は24時間受け付けています
出典・参考(確認日:2026年10月30日)
- 福島県「建設業法に基づく違反業者に対する監督処分の状況」(2026年9月30日更新)
- 福島県「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」(令和7年12月12日改正・施行)
- 国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト」
- 国土交通省「現場技術者の専任合理化(R6.12.13施行)」
※金額要件:主任技術者・監理技術者の専任を要する請負代金額4,500万円(建築一式9,000万円)、特定建設業許可を要する下請代金額5,000万円(建築一式8,000万円)は令和7年2月1日施行の建設業法施行令改正によるものです。本記事は確認日時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の事案についての判断は許可行政庁または専門家にご確認ください。






